観てきました。8月23日 14:00 開演。
ハイバイを見るのは3回目で、1回目はDVDで「おとこたち」を。2回目は今年の頭にやっていた、「ヒッキーソトニデテミターノ」。で、今回が3回目です。ですので、ハイバイの昔からのファンなどではなく、有名劇団の話題の公演を観に行こうかなといった気持ちで足を延ばしました。
詳しいキャストや詳細などリンクを張っておくのでそこで確認して頂き、ここでは至極個人的な内容を述べさせていただきたいと思います。
「て」と「夫婦」の2作同時上演なのですが、「て」は良かったです。
「良かった」と言ったのは、「面白くはなかったがよい」といった比較する言葉ではなく、「面白い」も「楽しかった」もどうもしっくりこなかったので、とちあえず「良かった」の良かったです。
何を言ってるのかとお思いでしょうが、全く問題なく「笑えるし、楽しいし、面白かった」作品ですので、まだ観ていない人は、観に行かれるのをおすすめします。
それでは、なぜなんとも煮え切らない感覚になったのか?
毎回ハイバイの公演を観る前と、あとにギャップがあるのですが、今回はそれが何なのかわあった気がします。
ハイバイを観劇する前の心持として毎回あるのが「よし!ハイバイだ!楽しみだな!沢山笑って、ジーンと来るものがあるんだろうな!ちょっとしたカタルシスなんかも感じちゃったりして、贅沢な演劇体験にするぞ!」みたいな、ザ小劇場的なグッとくる何か(ざっくりしててすいません。ニュアンスです。言語化が上手くできないけど、例えるなら大人計画駅なものを期待しているのかも、、?)なのですが、
観終わると、微妙に提供された舞台が違うことに、うっすら気づき、「なんだよ」とも「期待通り」ともならず、「ほほう。良かったな、、」になるのです。
確かに笑るし、切なくなる場面や、カタルシスのような物を感じる時もあるのですが、最終的には「物足りなさ」を感じてしまうのです。。
しかも、その「物足りなさ」を認めるわけではなく、自分のそもそもハイバイに抱いていた印象を違いを感じてしまうため、ひっくるめて「ああ、これがハイバイか。やっぱいいな」と、やんわりとした充実感を感じて家路につくのです。
今回もそうでした。正直、もっと笑えるのを期待していたのですが、そもそもハイバイは「笑える劇団」ではないということがやっとわかりました。
なぜか、いままで自分は「ハイバイ」=「笑える」という図式があったのですが(完全に勝手な思い込みです、、)3回目でやっと、その認識の違いが分かりました。
そのスタートラインに立ったことで、ようやくまともに舞台について考えることができます。
この「て」なのですが、岩井秀人本人の家族の話です。
「夫婦」も家族の話です。ですので2作同時に岩井家の話が上演されます。
岩井家の話なので、特別な事は起こりません。いうなれば「家族あるある」です。
理不尽な父親の暴力、認知症の祖母、兄と姉の言い争い、など、、
自分の家に置き換えてもあてははまるし、おそらくどの家庭も共感できる場面があるはずです。
その中でも、共通して感じられるのは「家族ってなんであつまるの?」
祖母の認知症が悪化して、長女が実家で暮らすと言いだす。せっかくなので家族全員そろって集まることになる。
なんで集まる?集まってどうする?なんで全員でカラオケをしないといけないの?
家族は、理不尽です。家族には謎の強制力があります。
それを「家族は呪い」だとだれかが言ってたような気がします。
その「家族の呪い」、そもそも「家族って、なに?」がじわりじわりと観劇中伝わってきました。
なんで、家族が集まるだけで、同窓会にも行けないの?
家族。結局、血のつながってるだけの他人じゃないか。家族だって傷つけるし、見捨てるし、なったことにするし。
振り返って見れば、切なくなるような場面がたくさんありました。その瞬間をふっと抜けさせるような、役者さんのバランス力。日常を見せられることが、実は一番心に残る。
始めに思ったように、大人計画のような劇的な場面は一度もありません。ただの日常と言ってもいいです。しかし、その日常の違和感や、滑稽さを感じるのがハイバイなような気がしました。
日常なので、ドラマチックな観劇後の満足感もありません。ただ残るのは、「しこり」です。なんともいえない「しこり」だけ持って劇場をでる感じ。その「しこり」は今後の自分の日常に劇的な変化を残すわけではないのですが、どこか日々の生活に違和感を与えてくれるものです。
ですのでまた、「夫婦」でそのしこりを植え付けに行きたいと思いました。
なんだかながったるしくなってしまいましたが、「て」はよかったです。
こんなふうにさりげなく違和感を与える感覚は他にないので、観て良かったです。
また新作で松尾スズキさんと松たか子さんが出るらしいので、それも楽しみというか絶対に行きます。やった!
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